11月22日(水)
18:10に家に帰り、風呂に入ってから準備する。ザック重量は15.6kgで、前回よりも3.4kg減っている。JR六甲道を22:31の快速に乗り、大阪に22:53に着く。さすがに休日前日はルナメール号は満席である。釣り人が多そうだ。桜橋口から新宮行きの23:30発に乗る。ウィスキーを飲みながら寝る。今日の天気予報では明日から良くなり金曜が最も天気が良く次第に崩れていくようだが土曜まで何とか天気は持ちそうだ。日曜の降水確率が50%で雨である。土曜中に出来るだけ行って日曜は下山のみが理想だ。紀伊田辺と新宮だけしか停まらないと思っていたら色々停まるではないか。お陰で余り眠れなかった。
11月23日(木)
朝5:56に新宮に着く。新宮駅構内で立ち食いうどんを食べる。奈良交通のバスに乗り換えて新宮を6:10に出発する。乗客は私1人だけである。今回は玉置神社で泊まらず行けそうならば行仙宿山小屋まで行こうと考えたので前回通せんぼされた上切原方面から登ろうと思い熊野本宮大社を7:35に通り過ぎて下向橋に降りる。工事は祝日なのでやっていなかった。
上切原方面の途中から吹越峠への分岐を捜すが見付からない。結局上切原まで行ってしまう。ここから山在峠方面に向かい1/2万5千の地図にある山在峠への近道の分岐を捜すが見付からない。結局大回りして山在峠に着く。ここで妙な鳥の泣き声が聞こえる。中年の男性1人が木の枝にスピーカーを置いて鳥の声を鳴らしていたのだ。鳥を呼び寄せているのだろうか。
ここから大黒天神岳と五大尊岳への登りはきつい。尾根は直登である。六甲山系と違って道は荒れていてずっと斜面の連続で足がフラットに置けないのでふくらはぎがきつい。山在峠から先は2回目なので地形は進むに連れて次々思い出す。大黒天神岳は送電線鉄塔通過地点で約半分である。五大尊岳は手前のピークの方と間違え易いが進むと五大尊岳の標識がある。
ここからは登りがゆるくなるが大森山まで基本的には登りが続く。大森山三角点よりも標識のある大森山の方が高い。大森山から30分程下ると山道から急に太い林道に分岐する地点が現れる。ここが水呑金剛で金属性の金剛杖が建っている。直進すると道は荒廃していて消えるとの表示の板切れがかすかに残っている。ここまでが玉置神社の主要部でこれから「岩の口」辺り迄は暫く道が良く歩き易い。玉置神社には14:16に着く。
前回は16:32に着いたので2時間以上早い。これは熊野本宮に寄らずに下向橋まで歩くのを省略してバスで来たのと、下向橋から迷わなかったのが原因だろうが山在峠の時間を比較してみると1時間程度しか変わらないので1時間は早く歩いた事になる。この神社で水をたっぷり補給する。参詣の人を2組程見かけた。
今日は本当に行仙宿山小屋まで辿りつけるだろうか一抹の不安を感じながら神社を出発する。前回間違った花折塚の先の林道に平行の山道もクリアして16:17に岩の口に着く。ここが分かれ目である。本来ならば縦走路を行くべきだが行仙宿山小屋まで辿り着くには縦走路ではコースタイムでは5時間45分〜6時間30分の6時間前後なので23時頃に到着となり遅過ぎる。
またヘッドランプで長く歩かなければならず地蔵岳辺りの危険箇所の通過もヘッドランプでなら時間も余計にかかるだろうから今回はエスケープルートの上葛川経由の道を選択する。このルートのコースタイムはガイドマップで計算すると4時間50分だがはっきりしない。予感だが5時間以上かかりそうな気がする。5時間としても21:00は過ぎるので初めての道なので迷う事も覚悟しなければならない。しかしツェルトと水・食糧はバッチリあるので不安は無いがツェルトを使いたくないので何とか行仙宿山小屋まで辿り着きたい。
また新しいルート開拓の気分もあるので楽しい。上葛川のバス道に降りるポイントに着くと未だその先に道が続いている。高度を下げたくないのでそのまま進むと上葛川の墓地の横を通過する。最後は村落の家の前に出た。これは登り返さなくてよかったので正解だった。ここから巡視路分岐までは葛川沿いの登りだ。村落道が終わって登山道に入る頃には真っ暗になって来たのでヘドランプを付ける。
前回行者還へのペツルの新型発行ダイオードのヘッドランプ使用時には非常に見にくかったが今回は非常に見易い。前回はガスの中を歩いたのでガスに乱反射されて見にくかったのがはっきりした。しかし巡視路分岐まで長かった。何十回も尾根を横切った気分だ。巡視路分岐までの途中に10箇所以上水を補給できるポイントがあった。やはりヘッドランプではルートを見失う事が4〜5回発生して時間をとられる。
この道も決して歩き易い道ではない。ストックがあるからまだそこそこのスピードで歩けるが無ければ夜の歩行はもう少し困難になっていただろう。巡視路分岐に着いたのは20:00を過ぎていた。葛川辻には20:32に着く。上葛川から1時間以上かかっている。ルートを見失っていなければ1時間以内で着けたに違いない。よっぽどここでツェルトを張ろうかと迷う。青いグランドシートも落ちている。
昨夜はバスで睡眠不足なのでかなり眠くなってきている。ツェルトを張る場所を見てまわる。しかし心を奮い立たせ18分後に出発する。笠捨山の登りで歩きながらも強烈に眠くなって来る。途中で腰を降ろしてウトッとする。空を見上げると木々の枝の間から美しい星が輝いている。再び心を奮い立たせ40分程で笠捨山に着く。
1/2万5千の地図でよく確認するとここから先は基本的には下りであるが行仙宿山小屋まで少なくとも3つのピークがある。体力的には未だ十分余力はあるが眠さの中での登下降は精神的にきつい。ぐっと堪えて進む。送電鉄塔が暗闇の中で発見した時に初めてほっとする。もうすぐであるのは前回の経験で分かるからだ。次に心配になってくるのは小屋に先客がいるかどうかだ。もう直ぐ夜の11時だ。これから食事や寝床の準備でうるさくすることになるので迷惑をかける事になる。小屋には22:59に着く。
笠捨山からのコースタイムより27分も余計にかかっている。恐る恐る小屋の扉を開いて中をヘッドランプで確認する。ヤッター。誰もいない。気兼ね無く泊まれる。内部を確認すると鍋釜やかんから食器や毛布まで何でもある。よく見ると日本酒が入口に置いてある。誰かが飲み切れずに重いので置いて行ったに違いない。よくあるパターンだ。
早速毛布だけは敷いて使わせてもらう。ガスコンロでスープや味噌汁などを作って飲んで一息つく。夕食や明日の朝飯と行動食用のジフィーズ飯を作りながらウィオスキーを飲む。寝るのは1時を過ぎていた。明日は早朝出立は止めて自然に目が覚めてから出発する事にする。
11月24日(金)
夜中に2回小キジに起きるが朝目覚めたのはすっかり明るくなった7時頃だった。朝日が部屋に差し込んで明るい。部屋の温度が寒暖計で4゚Cであった。食事や後片付けをして小屋を出発したのは9時になった。今日は予報通り快晴で雲一つ無い良い天気だ。周囲の山並みに雲海が下の方に見える。非常に気持ちが好い。今日は深山ノ宿までだ。本当ならば行者還暦小屋まで行きたい所だが出発も遅いので深山ノ宿までと覚悟する。
その先を目指すなら弥山しか無いがテント泊か小屋泊まりになる。深山ノ宿までなら気分的に余裕である。行仙岳は巻き道を見付けて頂上パラボラを迂回するが、道は余り良くなかった。ピークを通っても時間はさほど違わなかったかも知れない。怒田宿跡で道を取り違える。左を取ってぐんぐん下って行く。5分程しておかしいなと思い地図で確認するとどうやら右に取るべきだったようだ。15分以上ロスをしてしまった。
倶利迦羅岳を越えて久し振りに単独行の人に出会う。途中キノコのカワラタケかカイガラタケとサルノコシカケらしきものを見付ける。平治の宿では水の補給は前と変わらず5月のままであった。さすが持経の宿ではこの11月に水は補給されていた。ここから淡々と進むが思った程はかどらない。石南花岳辺りから暗くなり始める。
太古の辻手前からヘッドランプを着け始める。太古の辻に18:22に着き、深山ノ宿に18:50に着く。誰か先客は居るかと思ったが今日も誰も居ない。早速ヘッドランプで香精水を汲みに行く。やはりこの数日雨が降っていないので前回のように横の流れは無く本来の水桶にしか溜まっていない。落ち葉が紛れ込んでいて気持ちが良くないがやはり背に腹は変えられない。しっかり汲む。今日は昨日に比べて余裕である。
食事の準備をしながら明日の予定を考える。ラジオでは昼前から雨になるという事である。少しがっかりする。明日は夜明けの6時には出発していたい。雨模様では気力が萎える。最悪ここから前鬼にエスケープするとすれば9時01分のバスに間に合う必要があるがその為には朝夜明け前の4時25分に出発しなければならないので非現実的だ。
前進するなら弥山迄は必須だからそこから先は行者還トンネル西口か頂仙岳や栃尾辻経由の天川河合に降りるしか考えられない。地図の1/2万5千は弥山から天川河合方面につながっているものを持っていないが1/5万のガイド地図はあるので何とかなるだろう。だが天気が心配だ。取り合えず朝早く起きて朝に雨が降っていない限り弥山方面に向かう事にする。
やはり屋根と壁のある建物で寝るのは楽だ。立ってもテントにぶつからないし風の音でテントがバタバタしない。それでも鹿の泣き声はよく聞こえる。荷物スペースも広く取れるしテントが濡れる事もない。またテントを畳む必要もない。ラジオを聞きながらスープや夕食のジフィーズ等を作りウィスキーをのみながらゆっくりできるひと時はほっとする。山で暖かいものを作れるガスコンロとウィスキーは1日の終わりには欠かせない。明日の天気が持つ事を祈りながら21:00過ぎに寝る。
11月25日(土)
朝5時前に起きる。天気は良さそうだ。満天の星が輝いている。朝食を食べながら天気予報を聞くが昨晩とあまり変わっておらず昼前までは何とか天気は持ちそうなので弥山から天川河合に降りる事に決める。本日は弥山から先の狼平の避難小屋に泊まる事に決める。
ここだと小屋の状況は分からないが、水場は確実に近くにある。この先の栃尾辻の避難小屋は小屋の状況は分からない上に水場は無い。どちらに泊まるかは行ってからだと思う。いずれにしても明日東京に出張のため19:00頃には家を出発しなくてはならないが、十分間に合うだろう。行者還小屋まで行って明日吉野から帰るのでは風呂に入ったり東京への準備をするには間に合わないだろう。
大キジを撃ったり色々準備をして出発できたのは7:10になってしまった。天気は非常に良い。昼までと言わず出来るだけ持ってくれという気持ちで出発する。霜柱が立っているので昨夜は零下になったのだろう。体調は良い。草は濡れていない。朝露が無いのだ。空気が乾燥しているからだろうか。これから先笹の葉で濡れる対策をしなくてよいのはラッキーだ。
1時間近く登って釈迦ケ岳手前から急にガスが下から吹き上げて来る。直ぐ収まるだろうと暫くは思っていたらぐんぐん発達してきてついにはガスに覆われて視界が全く無くなりホアイトアウト状態になる。ザックの肩ひも状態が調子悪くて降ろして調節する間に今日はもうすぐ雨になりだすのではないかと思い始める。暫く様子を見るがガスは晴れそうも無い。いつも大峰では雨にやられているので次第に今回も天気予報より早く崩れ始めたのではないかと思い始める。
そうなると東京出張の準備で早く帰らなければならないし今日も明日も雨の中を歩いて初めてのルートを無理して歩いて遅れるのではないかと思い始める。釈迦ケ岳直前だがこう思い始めると前に進む気力が急に萎えて引き返すことにする。下ると早い。深仙ノの宿に近付くとガスが晴れてきた。判断が間違ったかクソッと思うがもう戻る気力は無い。
深仙ノの宿でこれから前鬼のバスに乗る予定を計算する。バスは14:47発なので8:30に深仙ノの宿を出発するとしてもまだ6時間以上ある。コースタイムは4時間20分なので余裕は十分ある。深仙ノの宿から太古の辻までは21分で通過し小仲坊に1時間半で着く。途中大勢の登山者に出会う。さすがに登山シーズンの土曜日だ。小仲坊で早い昼飯を食べながら50分程休憩する。小仲坊は何かの記事で見たが大学を出た息子さんが跡を継ぐそうだ。それと関係があるかは知らないが建設工事が行われていた。
ここには以前の同僚の妹夫婦ということで一緒に泊まったことがあるが、いつも通り過ぎるだけで余り利用していない。小仲坊から下って時間がまだ十分にあるので七重の滝で景色を見ながらスープやコーヒーを沸かして飲もうと思っていたら七重の滝では中型観光バスが来ていて大勢の観光客がたむろしていた。こんなのは初めてだ。彼らが退散するのを待ってからゆっくりコンロで湯を沸かし始めた。誰も来ない。
今年は紅葉が遅い。11月でも気温が高い日が多く山は余り色づいていない。いつもながら滝は見事だ。山で殆どゆっくりする事はなかったが今回の今日は特別ゆっくりしている。1時間程ゆっくりしてから出発する。この先の下りでも余裕がある性か道端の草を観察しながら進む。ムラサキシメジ他のキノコを何種類か発見する。またフユイチゴ(ナワシロイチゴ・エビガライチゴ・クマイチゴ・カジイチゴのキイチゴか?)見付ける。14:27に前鬼口に到着。 |